こんにちは、くっかばらです。このブログでは、自分の経験からおすすめの山などを紹介しています。今回は、南アルプスの北岳です。
6月の北岳と言えばキタダケソウ。出会うには大樺沢から登るのが手っ取り早いけど雪がしっかり残っている。ルートはどうしよう?
6月中旬から7月初めにかけて、南アルプス北岳でしか見られないキタダケソウ。氷河期からの生き残りと言われている絶滅危惧種です。ハクサンイチゲと同じきんぽうげ科の花なので形は似ていますが異なる花。ずっと見てみたいと思っていました。
花の時期は梅雨時なので普通は天候が悪い中の鑑賞になりますが、今年は異例の早い梅雨明け。チャンス到来!と、天気の良い6月の終わりにソロで登山してきました。
しかしキタダケソウ会いたさのあまり大樺沢で軽く滑落をやらかしてしまいました。つい最近「遭難を防ぐために意識していること」なんていう記事を書いたばかりなのに・・・正直すごく怖かったし、かなり落ち込みました。
しょうもないミスで怖い思いをしましたが、貴重な体験になったことも確か。皆様はこんな間違いはしないでしょうが、読み物として楽しんで頂けたら救われます・・・。
ここ数年で1番の失敗かつ後悔となりました・・・。
北岳・キタダケソウへのルート
北岳への登山口である広河原への道路は、6月末まで閉鎖されています。閉鎖中に北岳へ行くには夜叉神峠から池山吊尾根を利用していく人が多いようです。
上級者向けのバリエーションルートです。
このルートはキタダケソウの群生地を通って行けるのですが、私はソロでそんな道を歩くのはちょっと考えられないので(レポートあげている単独女性とかすごいです!)、6月末まで待っていました。
広河原通行止め解除後、北岳に上がるルートは大きくふたつあります。御池ルートと大樺沢ルートです。現在、大樺沢の下部は通行止めになっているので、広河原からは御池ルートを通るしかありません。
御池ルートは、白根御池小屋から二つに大きく分かれます。大樺沢左俣から八本歯のコルを経由するルートと、草すべりか右俣で肩ノ小屋へ上がって山頂を目指すルートです。
キタダケソウは八本歯のコルから北岳山荘へ伸びるトラバース道に群生しています。なので大樺沢左俣から登るのが近道。しかし急な斜面の雪渓を登るため、前爪つきアイゼン・ピッケルが必要と言われます。私は軽アイゼンの他は厳冬期用のワンタッチアイゼンしか持っておらず、どちらも帯に短したすきに長し。
そこで右俣から肩ノ小屋を経由し、遠回りだけど確実にキタダケソウを見に行く計画を立てました。
計画通りにしていたらキタダケソウを見れたのに。下にレポートするように、装備もないのに血迷って左俣へルート変更し、軽く滑落をやらかしてしまいました。
トレーニングで雪を滑ってみたことはありますが、本当に滑ったのは初めて。10〜20mくらい滑りました。体の向きを変えたりしてなんとか止まりましたが、滑っているときは生きた心地がしませんでした。怖すぎて今思い出しても震えます。
その後なんとか気持ちを立て直し、計画通り右俣から北岳へ登頂しました。時間が足りなくなって、キタダケソウを見に行くことはできませんでした。
北岳の登山レポート
広河原から白根御池小屋へ
甲府駅の南口から広河原行きのバスが出ます。路線バスも発着するのでどう並んだら良いか悩みましたが、あまり混んでいなくて杞憂でした。
山梨交通バスは交通系ICが使えます。片道1990円。その他に、マイカー規制区間の利用者、つまり夜叉神峠から上へ行く人は協力金として片道300円必要です。ガイドの女性が車内に集金に来ます。
甲府から広河原までは2時間かかります。そのうち後半の1時間はものすごい山道をくねくね走って行きます。すぐに通行止めになってしまいそうな道でした。
途中、北岳から間ノ岳の吊尾根がきれいに見えるポイントがあります。撮影したいならバスの左側に座る方がいいです。
12:00、広河原に到着しました。広河原山荘は新装オープンしたて、ランチ営業もしています。この日は白根御池小屋へ上がるだけなので、素敵な外のテラスでゆったりランチをしました。
12:30、広河原を出発。インフォメーションセンターの方へ戻って、通行止めの印のあるゲートを抜けて行きます。いきなり北岳バットレスがどん!と見えてテンションが上がりました。山レポートでよく見る吊り橋を渡っていよいよ登って行きます。吊り橋からは広河原のテント場が見えました。快適そうなテント場です。
樹林帯の急登をひたすら登って行きます。この日は下界は猛暑日でしたが、広河原や樹林帯の中は風が吹き抜けてとても気持ちがよかったです。途中、所々ベンチや丸太があるので休憩できます。
多分第二ベンチだと思うのですが、そこからは鳳凰三山がとてもきれいに見えました。正面に見えているのはおそらく観音岳?
第二ベンチからも急登は続きます。梯子もたくさん。道は小石混じりのざれた道で、下山時に苦しめられることになります。
急登が終わると横引きの道になって沢を渡渉します。崩落しかかっている箇所もありました。この沢のそばにミヤマハナシノブが咲いているとすれ違った方が教えてくださり、見逃すことなく撮影することができました!紫色のなんとも上品な花。この沢の周りにはほかにも花がたくさん咲いていました。
この沢を過ぎたら白根御池小屋はすぐ。14:40、小屋に到着。チェックインして明日に備えました。
白根御池小屋の宿泊レポートはこちらをどうぞ↓
白根御池小屋から大樺沢へ
2日目。この日はキタダケソウを見るためコースタイムは10時間を超えます。日の出前に起き出し、4:00に出発しました。まず二俣を目指します。夜明け前で樹林帯の中は暗く、クマが出そうでどきどきしました。
二俣の大きな岩の上で朝ごはんにしました。右俣は完全に夏道になっているので、ここから右俣で肩ノ小屋へ上がる計画でした。そして北岳→八本歯のコルへ下りキタダケソウを探す。ああ、机上の私は賢明だったのに・・・。
二俣で朝ご飯を食べていたら、かなり軽装な高齢の方が左俣を登って行かれます。見ると結構夏道が出てる。左俣を登れればキタダケソウには2時間で会える。チェーンスパイクは持っている。なんとかなるかな・・・と、今思うと完全に血迷いました。根拠のない希望的予測。
夏道を1時間強歩くと、大きな雪渓に出ました。雪渓を上がるしかなさそうなのでチェーンスパイクをつけて試しに歩いてみました。そうしたらいきなり滑って、そのまま10〜20mくらい滑落してしまいました。幸い怪我もなかったのですが滑る感じがとても怖く、止まるまで生きた心地がしませんでした。ナルゲンボトルが転がっていってしまった(ごみにしてしまった。ごめんなさい・・・)。
近くにいた方が、「もっとキックステップを入れて」とアドバイスくださいましたが、とても続けられる気がしなかった。300mほど登ってきてしまったので悔しいですが、安全第一に二俣へ戻ることにしました。戻る間も膝ががくがくして数回転びました。大袈裟かもですがわんわん泣きたい気持ちでした。東京へ帰ろうと思いました。
でも二俣に帰ってきて落ち着いて考えてみると、ここで帰ったら、単に自分が甘かっただけなのに言われのない苦手感を北岳に抱いてしまうような気がしました。時間はまだ6:30。キタダケソウはあきらめて、目標を北岳登頂に変えました。時間的にキタダケソウを見に行くことも可能だけど、登りの累積が2000mを超えてしまう。下りも2000mあるので歩き切れるか自信がない。滑落したうえにもし疲労で動けなくなったら、と思うとキタダケソウはあきらめるのがベストと判断しました。
今の所の私の1日の限界は、登りは1800mほど、下りは2400mほど。富士山登山の時でした。
右俣から登って行きます。北岳バットレスが目の前に見え、お花の咲く素晴らしい道でしたが、まだ胸がザワザワしてあまり写真どころではありませんでした。急登を一生懸命登っていたら、小太郎尾根分岐の近くで緑色のハクサンイチゲを見つけて、やっと少し嬉しくなりました。
肩ノ小屋から北岳山頂へ
稜線に出ると横引きの道が続いています。その向こうに肩ノ小屋が。北岳はさらにその向こう。ここから北岳はとても長く感じました。肩ノ小屋から上は岩が露出した道になります。
9:20、山頂に到着しました。北岳登頂は果たせた・・・。それにしても素晴らしい天気で、抜けるような青空に富士山が浮かび、反対側には甲斐駒ヶ岳と仙丈ヶ岳。南アルプスの女王は優美でした。
お花を楽しみながら草すべりで下山
山頂からは間ノ岳方面への険しい道が見えています。計画通りならここから八本歯のコルまで下ってキタダケソウを見るはずでしたが、これ以上登り下りする自信はゼロなので今回はこれで退散とします。
9:30、下山を開始しました。肩ノ小屋へ戻り、横引きの道を歩いて行きます。この部分は百花繚乱のお花畑で見事でした。やっとお花を楽しむだけの余裕が出てきました。
草すべりの上部にはキンポウゲのお花畑が広がっていました。道沿いにもいろいろな花が咲いています。
草すべりはものすごい傾斜で、下る時はかなり神経を使います。そして小石混じりのとてもすべりやすい道。私は滑落事件でまだ動揺していたのか、疲れていたのかわかりませんが、10回は転倒してしまいました。そのまま沢筋へ落ちかねないので危ないです。ストックを使えばよかったと後で思いました(登山道に悪そうなので普段あまり使わないようにしています)。
11:15、白根御池小屋に戻り少し休憩、CCレモンを買って一気飲み。行きと同じ御池コースを下って行きますが、ここもとても滑りやすいです。
広河原に戻ったのは13:00。バスの時間まで1時間あるのでお昼を食べようと思いましたが、どういうわけか食欲が全くなく。「季節のジェラート」を購入しました(400円)。桃のジェラートでとても美味しかった。一緒に持ってきてくれたお冷やが美味しすぎました。
10mちょっととはいえ雪上を滑落するのは本当に恐怖でした。全てが自分の甘い判断のせいですが、教訓として貴重な体験とも言えるかもしれません。そして今後のために決めたことがあります。
「◯◯を見る」とこだわりすぎないこと。「見れたらラッキー」なだけ。
他の人は大丈夫でも、自分は装備不足で雪上を歩かないこと(技術がない)。
12本爪アイゼンを夏靴にもつけられるようにすること。→後ろコバのある3シーズン用登山靴を買い(エクイリビウム)、残雪期にはベイルを交換することにしました。
北岳へは、しっかりした装備でまた6月に行きたいと思います。
アクセスとデータ
アクセス | ◯ | 甲府から山梨交通バスで広河原へ 片道1990円+協力金300円、2時間 平日の始発は9時、週末は早朝便あり。1日4往復 |
難易度 | ◯ | 右俣、もしくは草すべりコースは急登だが危険箇所はない ※左俣はこの時期雪山装備が必要 |
トイレ | ◯ | 広河原インフォメーションセンターに簡易トイレ 白根御池小屋にチップ制の外トイレ 肩ノ小屋でも借用可能 |
データ | 行動時間:10h45m 総距離:13.7km 累積標高:(上)2110m (下)2144m | |
その他 | 装備:チェーンスパイク ダブルストック(使用せず) フリース(小屋で夜に使用) ガス缶(使用せず) 広河原山荘ではシャワーを利用可能(800円) |
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